「部下に注意したいけれど、ハラスメントと言われるのが怖い」
人を傷つけないように言葉を選ぶことは、管理職に必要な姿勢です。
ただ、必要な指導まで見送ると、本人が改善すべき点を知る機会が失われ、周囲にも負担が広がる可能性があります。
大切なのは、相手を追い込まずに、仕事で求める行動を明確にすることです。
この記事では、適正な指導を考えるための基準と、管理職だけに判断を任せない企業の支援について説明します。
適正な指導とパワハラをどう区別するか
厚生労働省は、職場のパワーハラスメントを、優越的な関係を背景とし、業務に必要な範囲や社会的に相当といえる範囲を超え、就業環境を害するという3要素をすべて満たす言動と説明しています。
一方、客観的に適正といえる業務指示や指導は、それには該当しません。
ただし、判断には目的、言動の態様、繰り返しの程度、経緯、本人の心身の状況などが関係します。
「仕事の話だから問題ない」「小声で伝えたから大丈夫」とは言い切れません。
部下に改善すべき行動があっても、人格を否定してよい理由にはなりません。
指導する側は、何を改善してもらうための話なのかを説明できる状態にしておく必要があるでしょう。
指導前に整理したい4つのこと
指導をする前に、次の内容を短く書き出すことを提案します。
| 整理すること | 確認例 |
|---|---|
| 確認できた事実 | いつ、どの業務で、何が起きたのか |
| 求めていた基準 | 期限や手順は、事前に共有できていたか |
| 業務への影響 | 顧客対応、品質、他の社員の作業に何が起きたか |
| 必要な支援 | 手順の説明、人員、業務量の調整は必要か |
「責任感がない」という印象だけでは、本人は何を変えればよいのか分かりません。
「期限までに報告がなく、次の担当者が作業を始められなかった」と整理すると、確認する行動が明確になります。
上司の指示が曖昧だった場合は、その点も修正します。本人の行動と、企業の仕組みの両方を確認する姿勢が必要です。
事実・影響・改善行動を伝え、本人の説明を聞く
次は、報告が遅れた場合の想定会話です。
「昨日15時までにお願いしていた進捗報告が、今朝の時点では届いていませんでした。次の担当者が準備を進められない状態になっています。
間に合わなかった事情を、まず聞かせてください」
説明を聞いた後に、次の行動を確認します。
「今後、期限に間に合わないと分かった時点で、状況と見込みを共有してください。今回は資料の確認に時間がかかったのですね。
確認先を一緒に整理して、次回は前日の段階で進捗を確認しましょう」
この例は、相手の説明を聞く前に「怠けている」と決めつけず、改善する行動と必要な支援をそろえるための提案です。
業務の緊急性や安全上の問題がある場合には、先に必要な指示を出し、その後で事情を確認する場面もあります。
ハラスメントに認定されやすいのは人格評価と終わりのない追及
人事評価を対象者に伝える時、下記のような点に注意をしてほしいと思います。
「何をやっても駄目だ」「社会人として失格だ」といった言い方では、改善対象が行動から人格全体に広がってしまいます。
また、説明や謝罪を何度も繰り返させるより、今後の対応、確認日、支援する内容を定めて話を終えることを提案します。
周囲への共有が必要な場合も、業務上必要な範囲を考えます。
上司自身が怒りを感じ、声が大きくなりそうなときは、緊急対応を除き、いったん呼吸を整えてから話す時間を設定します。
ただし、落ち着いた口調でも内容が不適切なら問題は残ります。
企業に求められる指導基準と相談できる仕組みの整備
管理職に「うまく伝えてください」と求めるだけでは、判断の負担が集中します。
企業側には、次の運用を提案します。
- 職種や役割ごとに、求める行動・品質・報告基準を共有する。
- 指導に迷ったとき、人事や上位者へ相談できるようにする。
- 研修で自社の場面を使い、伝え方と業務調整を検討する。
- 指導後に、合意した内容と企業側の支援を簡潔に記録する。
記録は、相手を不利にするためではなく、認識と対応を確認するために残します。
閲覧できる人を業務上必要な範囲に限定し、個人情報の扱いにも配慮します。
相談や申告があった際は、指導した側の説明だけで適否を決めず、企業の手順に沿って事実を確認します。個別事案の法的判断が必要な場合は、弁護士等への確認も必要です。
業務上で必要な指導を実行できる形にする
ハラスメントを抑制した上で伝えたいことが伝わるコミュニケーションを確立していくために、業務上の指導で伝える「事実」「業務への影響」「改善してほしい行動」を書き出すことを習慣化してください。
あわせて、部下の説明を聞く時間と企業が支援できる内容を用意します。
仕事の品質や期限は、事業を進めるうえで向き合う必要があるものです。管理職がその理由を言語化し、実行を支えることで、部下の尊厳を守りながら成長を求める指導につなげていきます。
管理職の指導と職場の仕組みを見直したい企業へ
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「管理職が必要な指導をためらう」「企業「としての基準が曖昧」という課題は、人材育成コンサルティングをご覧ください。
指導をためらう背景については、管理職100人に聞いた、ハラスメント対策に関する本音調査も合わせて読んでみてください。
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