人的資本経営から考える「常識」のアップデート

人的資本経営を重視する企業において、全ての従業員の肉体的、精神的、社会的に満たされた状態「ウェルビーイング」の考え方を取り入れる動きが見られます。
(ウェルビーイング経営に関しては、過去の記事をご覧ください。)
多様な働き方を実現し、社員自らがイキイキと仕事に取り組むことは、会社としての生産性を高めることに効果的です。
ハラスメントを未然に防ぎ、社員にとって心理的安全性の高い職場環境を提供しようと奮闘する企業は増えてきました。
しかし、ハラスメント問題が減らない、管理職がリスクを恐れ部下とのコミュニケーションを避けているなど、課題を感じる企業も多くあるようです。
本記事では、人的資本経営を戦略として実施する企業の事例を紹介し、心理的安全性の高い職場環境を整えるために必要な要素について解説します。

心理的安全性の高い職場とは

心理的安全性の高い職場とは、メンバーが恐れや不安を感じることなく、自分の意見やアイデアを自由に表現できる環境を指します。
心理的安全性が高い職場の特徴は以下のようなものです。

  1. 意見の自由な表明: チームメンバーが自分の意見やアイデアを自由に共有できる。意見を述べることに対して批判や非難を恐れる必要がない。
  2. 失敗への寛容: 失敗やミスを学びの機会と捉え、罰や責任追及の対象にせず、建設的なフィードバックを行う。
  3. 支援的な環境: チームメンバーが互いに支え合い、助け合う文化が根付いている。困難な状況に直面した際に支援を求めることができる。
  4. オープンなコミュニケーション: 情報やフィードバックが透明に共有され、コミュニケーションの障害が少ない。問題や課題が迅速に共有され、解決に向けた協力が促進される。
  5. 多様性と尊重: 様々なバックグラウンドや意見を尊重し、多様な視点が歓迎される。個々の違いが受け入れられ、個性や価値が認められる。
  6. リーダーシップのサポート: リーダーが模範を示し、心理的安全性を確保するための行動を取る。リーダー自身が誠実でオープンなコミュニケーションを実践する。

これらの要素が整った環境では、チームメンバーがリスクを取ることや新しいアイデアを試すことに対して前向きになり、結果的に創造性やチームのパフォーマンスが向上する傾向があります。

Googleが解明した心理的安全性の重要性

Googleのピープルアナリティクスチームは、効果的なチームを可能にする条件を調査しました。
哲学的な思考ではなく、どのようなメンバーでチームを構成し、メンバー同士の関係性やそれぞれが担う役割など「効果的なチーム」の条件に何が必要かを分析しています。
様々なリサーチの結果「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」ということが真に重要だと突き止め、チームの効果性に影響する因子として下記が重要な順であると示しました。

心理的安全性

「チームの中でミスをしても、それを理由に非難されることはない」と思えるか。

相互信頼

「チームメンバーは、一度引き受けた仕事は最後までやりきってくれる」と思えるか。

構造と明確さ

「チームには、有効な意思決定プロセスがある」と思えるか。

仕事の意味

「チームのためにしている仕事は、自分自身にとっても意義がある」と思えるか。

インパクト

「チームの成果が組織の目標達成にどう貢献するかを理解してる」か。
参照:「効果的なチームとは何か」を知る。
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness#identify-dynamics-of-effective-teams

Googleが解明した心理的安全性の重要性

心理的安全性を高める企業の取り組み

Google

Googleでは信頼関係をつくるため、メンバーとマネージャーが1対1で定期的に行う1on1ミーティングを実施。
普段の業務を振り返りながら、仕事上の悩み、目標、今後のキャリアなどについて対話をします。
Googleが定義する「最高の上司」とは、自分自身が直接的にパフォーマンスを発揮するのではなく、部下が最大の成果を上げるための場づくりができる人と定めています。
部下たちが自分を素直にさらけ出し、感情的な衝突が起こらないよう、1on1で繰り返し部下の話に耳を傾けることを大切にしているのです。
そのため上司は、部下の信念や価値観に寄り添って目標を設定し、チームをひとつの目標に向かわせるために1on1を通して心理的安全性を築いています。

株式会社ねぎしフードサービス

東京や神奈川を中心に飲食チェーン店を展開しており、人材育成において高い評価を受けている企業のひとつです。「従業員重視」「顧客本位」という考え方を大切にしており、逆ピラミッド型の組織図が特徴です。
また、「働く仲間の幸せ」を企業ビジョンの最重要として掲げています。そのため、従業員間のコミュニケーションを大切にし、従業員が成長するためにPDCAのCを「Communication」に置き換え考えています(元々はCheck)。
アルバイトも含む従業員が、自分事として仕事を捉え、顧客のために働いているという実感を持てるようにするためです。
顧客のために働いているという実感がもてるようになれば、立場を超えて本音で意見交換ができるようになると、ねぎしフードサービスでは考えています。

株式会社カヤック

WEBやゲームの制作を事業としている株式会社カヤックでは、役割はあるけれど役職がないというカヤックならではの文化が基盤となり、立場に関係なく意見を言える環境が整っています。
また、ランダムに組まれた2人組で、お互いの良いところと悪いところをコメントし合う制度も導入しています。
この制度を通して、メンバー同士の相互理解を深めることができるのです。
さらに、半期ごとの査定では、失敗とそこから得た学びをヒアリングし、従業員だけでなくCEOを含む全てのメンバーが失敗や弱みを認め、さらけ出しています。
このようにありのままの自分を見せ、受け止めてもらえる環境づくりが、心理的安全性を高める要因となっているのです。

人的資本経営時代のリーダーに求められるスキル

単にビジネスの成果を追求するだけでなく、人材の価値を最大限に引き出し、組織全体の成長と繁栄を実現するためのリーダーシップが求められます。
心理的安全性を高めることは、組織内で起こる課題を解決し、より生産性を高め企業としての価値向上に繋げる働きをもたらします。
従業員が本来持つ能力を最大限発揮できる環境を、会社として提供することが人的資本経営時代を生きる最も重要な戦略となるでしょう。

常識は、時代の変化とともにアップデートされていきます。
今までは良かった出来事もハラスメントの対象になり、人を傷つけるだけでなく、自身のキャリアを失うことや企業価値の低下につながりかねません。そうならないためにも、常識をアップデートし、企業として問題を未然に防ぐための教育に投資することをお勧めします。

弊社では、安心して働くことのできる職場環境作りを進める担い手となる人材を育成する1つの手段として「雇用クリーンプランナー」の資格普及を行っています。
一般社団法人 クレア人材育英協会が事業運営する『雇用クリーンプランナー』は、労働法、労務、ハラスメントリテラシーを学習して、企業内での労働トラブルやハラスメントトラブルを未然に予防するための資格です。

企業で働く中でハラスメントリテラシーを?につけたプロフェッショナルとして社内体制の整備・構築、問題解決の?援などをしたいと考えている人におすすめです。
また、企業の心理的安全性が高く、従業員が成長しやすい職場づくり、職場で生じるトラブルの予防、対処ができる人材育成をしたいという要望にもマッチしている資格です。
受講はオンラインで自分の空いている時間を使って学ぶことができます。

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