心と身体だけでなく、社会的にも良好な状態を目指すウェルビーイングへの関心が高まっています。
「それは何をもたらすのか」をテーマに2024年9月に開催する国連未来サミットでも、重要な議題として挙げられています。
経営理念に取り入れ、従業員のメンタルヘルス、健康管理や維持・向上に取り組んでいる企業は増加していますが、「ウェルビーイング」という言葉はとても概念的であり、どのように経営の中で取り組んでいけばいいのか迷われる方も多いでしょう。
本記事では「ウェルビーイング」について解説し、企業で適用する際のポイントを解説します。

ウェルビーイング経営

経営にも必要な視点であるウェルビーイングとは

「ウェルビーイング(well-being)」は、健康、幸福、福祉などに直訳されます。
この言葉が初めて登場したのは、1946年の世界保健機関(WHO)設立時です。

世界保健機関憲章では、「健康とは、単に疾病がない状態ということではなく、肉体的、精神的、そして社会的に、完全に満たされた状態にある」とするなかで「ウェルビーイング」を使用しています(”Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”)。

「Health:健康」は、狭い意味での心身の健康のみを指すのではなく、感情として幸せを感じたり、社会的に良好な状態を維持していることなど、全てが満たされている広い意味での「健康」である、と解釈できます。

ウェルビーイングを構築する5の要素

ウェルビーイングを構築する要素は2種類あります。
それぞれ5つの要素に分類されているので、それぞれ紹介したいと思います。

基本的なウェルビーイングの要素

ウェルビーイングの概念として「ポジティブ心理学」という自己実現理論を唱え発展させた、マーティン・セリングマン氏によって考案された「PERMA」という指標があります。
人は以下の5つの要素を満たしていると幸福を感じるというもので、頭文字をとって
「PERMA」と呼ばれています。

  • Positive Emotion(ポジティブな感情)
  • Engagement(何かへの没頭)
  • Relationship(人との良い関係)
  • Meaning and Purpose(人生の意義や目的)
  • Achievement/ Accomplish(達成)

アメリカのギャラップ社が定義した要素

また、世論調査やコンサルティング業務を行うアメリカのギャラップ社が定義した5つの要素もよく知られています。

  • Career Wellbeing:仕事に限らず、自分で選択したキャリアの幸せ
  • Social Wellbeing:どれだけ人と良い関係を築けるか
  • Financial Wellbeing:経済的に満足できているか
  • Physical Wellbeing:心身ともに健康であるか
  • Community Wellbeing:地域社会とつながっているか

このウェルビーイングに関してはこれまで欧米が主体となって研究を進めてきましたが、近年は日本でも東洋と西洋、集団主義と個人主義などの違いに着目し、また日本の国民性を考慮に入れたウェルビーイング研究が進められています。

なぜウェルビーイングが注目されているのか

ウェルビーイングが注目されるようになった背景は、豊かさや幸せに関する発想の転換にあります。
第一生命経済研究所取締役ライフデザイン研究部長の宮木氏は、「以前は、組織や国が経済的に豊かであることが従業員や国民の幸せにつながると考えられてきたが、従業員や国民が幸せだと組織や国が豊かになるということが研究を通じて分かってきた」と日経Bizの取材で発言しています。

つまり個人が幸せであると感じていることが、企業や社会のエネルギーになるということが分かったのです。
こうした背景により、日本においてもウェルビーイングを重要視する経営が定着しているのだと考えます。

ウェルビーイング経営への取り組み

ウェルビーイング経営を実現させるために検討してみるとよいとされる取り組みとしては、次のようなものが挙げられます。

・ヴィジョンの共有

働き方や組織の多様化が進む中では、企業の存在意義や長期的なビジョンなどを経営者が積極的に発信し、共に向かう方向を示すことが必要です。
なんのためにやるのかという大義を明確にすることによって、目的意識を定着させ、達成に向けてのスピードをあげます。

・労働環境の見直し

長時間労働の是正はもちろんですが、仕事や個人に合った多様な時間・場所などの勤務形態、有給休暇や育児休暇取得がしやすい雰囲気づくりなど、柔軟な働き方ができる労働環境を作ることが望まれます。

・健康増進

やりがいを持って働くためには心身が健康であることが重要です。健康診断や予防接種の実施はもちろん、ストレスチェック、産業医への相談窓口やフィットネスなどの健康施設の設置も有効です。

・良いコミュニケーション環境をつくる

良好な人間関係が築けている職場は、生産性が高いと言われます。
より良いコミュニケーションを取れるような機会やスペースを作ったり、社員用のコミュニケーションツールを導入するとよいでしょう。また、従業員が気軽に相談できる環境を整えることで、早期に問題を発見し、解決までの糸口を導きやすくなります。

ウェルビーイング経営を担う人材育成

職場環境が良好であることは、人材獲得においても重要なポイントとなります。
弊社では、安心して働くことのできる職場環境作りを進める担い手となる人材を育成する1つの手段として「雇用クリーンプランナー」の資格普及を行っています。

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