「最近の部下は指示待ちばかりで挑戦しない。」「トラブルの報告がいつも直前になる。」
今回の記事は、チーム全体がこのような状態になっていて、この先が心配だと感じている経営者に読んで欲しい内容です。
経営者が、会社全体やその中の1つの部署にいる人材の自信や意欲が低いと感じているなら、それは心理的資本の低さの表れかもしれません。
自信や意欲が低いと行動を起こそうというモチベーションも高まりにくくなります。
経営者が従業員を見て心理的資本が低いと感じることは少なく、モチベーションの低さに気づくことの方が多いと思いますが、その背景には心理的資本の低さが関係していることがあり、この記事ではそこへの介入の必要性についてお伝えしたいと思っています。
モチベーションと心理的資本の関係
モチベーションとは、簡単に言うと「人が行動を起こし、継続するための動機づけ」です。
モチベーションを高める背景には、行動する意味や価値を感じられることに加え、心理的資本が関係する場合があります。
心理的資本とは、目標に向かって行動する自信や希望、困難を乗り越える力、将来に対する前向きな見通しなど、行動を支える心理的な資源です。
つまり、行動する意味や価値を感じることが動機づけにつながり、心理的資本は、その行動への挑戦や継続を支える役割を果たします。
モチベーションが高まるために、必ずしも心理的資本が必要というわけではありません。しかし、心理的資本は、目標に向かって行動する意欲や、困難に直面しても挑戦を続けることを支える重要な心理的資源です。
例えば、従業員が給与にある程度満足し、職場の人間関係にも大きな問題がないにもかかわらず、仕事へのモチベーションが低下している場合があります。
その背景には、仕事の中で成功体験を得られない、自分の努力によって状況を変えられると感じられない、目標達成への道筋が見えないなど、心理的資本の低下につながり得る要因が存在している可能性があります。
そのため、従業員のモチベーションを考える際には、待遇や人間関係だけでなく、仕事を通じて心理的資本が育まれる環境になっているかという視点も重要です。
従業員の心理的資本が低くなる理由
従業員の心理的資本の低さは、大きく分けると2つの要因があると言えます。
1つは、その企業に就職する前から心理的資本が低かったという理由が考えられます。
その企業の採用の傾向や配属の傾向から、心理的資本が低い人が集まりやすいと組織全体の心理的資本が低く感じられるのも当然です。
もう1つの要因は、元々ある程度は心理的資本が高くても、それを活かして活動するための権限、目的、設備、人員などが不足しているため、心理的資本を発揮できる状態ではないため、モチベーションの低下が生まれているという理由です。
この場合は、厳密には心理的資本が低いわけではないが、発揮できる状態にはないための結果として低くなっていると言えます。
上記の2つの理由が重なり合っているケースも少なくありません。
心理的資本が低いと職場に何が起きるのか
心理的資本が低下すると職場はどうなるのでしょうか。
HEROの4つの要素ごとにみていきましょう。
- Hope(希望)の低下:「どうせ無理」と諦め、挑戦回避・指示待ちになる
- Efficacy(自己効力感)の低下:「自分にはできない」と失敗を恐れ、抱え込み・相談の遅れにつながる
- Resilience(回復力)の低下:一度のミスで折れて立ち直れず、長期の停滞・離職につながる
- Optimism(楽観性)の低下:「トラブルの原因を自分の才能や環境のせい」にして、責任回避・学習停止に陥る
では、これらの心理的資本が低下したとき、実際の職場ではどのような問題として現れるのでしょうか。
以下のような状態が生じているなら、その組織の心理的資本は低いと危機感を持つ必要があります。
従業員の行動に表れる具体的な4つ問題
1【挑戦回避】「どうせ無理」と新しい仕事を嫌がる
状態:業務の改善案や新規プロジェクトを打診しても、「今の体制じゃ無理です」「前も似たようなの失敗しましたよね」と、ハナから諦めて動こうとしない。
背景: Hope(希望)の低下。目標達成への道筋が見えず、未来に期待が持てなくなっている
2、【抱え込み・報告遅延】トラブルを隠し、限界まで相談しない
状態: ミスや遅れが発生しているのに、「自分でなんとかします」と抱え込み、取り返しのつかない段階(締め切り直前)になって初めて上司に発覚する。
背景: Efficacy(自己効力感)の低下。「失敗したら評価が下がる」「怒られる」という恐怖が勝ち、助けを求めるハードルが上がっている。
3、【早期離職・学習停止】一度のミスで心が折れ、投げ出す
状態: 厳しいフィードバックを受けたり、コンペで負けたりすると、数日間露骨に落ち込んでパフォーマンスが激減する。最悪の場合、そのまま「この会社は自分に合わない」と離職を決意する。
背景: Resilience(回復力)の低下。失敗を学習のデータとして捉えられず、立ち直るしなやかさが枯渇している。
4、【責任回避・他罰化】「自分は悪くない」と他人のせいにする
状態: 成果が出ない原因を「景気が悪い」「他部署の連携が遅い」「部下が使えない」と、すべて自分以外の外側になすりつけ、自分の行動を変えようとしない。
背景: Optimism(楽観性)の低下。「自分の工夫(主体性)で状況を変えられる」と信じられず、他力本願になっている。
一見すると「本人のモチベーション不足」や「性格の問題」に見えるこれらの行動も、裏を返せばすべて「心理的資本(心のエネルギー)」が低下しているSOSのサインなのです。
心理的資本の低さという課題を解決する方法
心理的資本の低下は挑戦回避、相談の遅れ、離職リスクの増大など、チームの生産性と業績を直接下げます。
チームの生産性を上げる第一歩は、部下の性格ややる気を責めることではありません。
彼らの心理的資本のどこが枯渇しているのかに気づき、適切な声かけや関わりで『心のエネルギー』を満たしてあげることです。
具体的に、以下のような方法が考えられます。
元々、心理的資本が低い人が集まっているなら、心理的資本を高めるコーチング、研修を行うことが望ましいでしょう。
個人の心理的資本を高め、その上でそれが発揮できるマネジメントを行っていくという形です。
対象者の人数が少ない場合はコーチング、多い場合は研修をおすすめします。
もう1つの方法は、管理職が目的設定の明確化、目的を達成するために必要な権限委譲を行うこと、設備や人員を整えることです。
これらの取り組みを管理職が進められない場合は、その人の心理的資本の低さが関係している場合もあります。
その場合は、管理職への心理的資本を高めるコーチングを行うことも必要になります。
心理的資本は開発可能な心の資源です。
組織が陥っている慢性的なモチベーション低下とそれに伴う行動の不足に関しては、適切な投資を行って従業員の心理的資本を高めていきましょう。
また心理的資本が発揮できる環境づくりに力を入れてください。
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