脳の覚醒タイプを判断する方法

前回の脳の覚醒タイプと仕事で活躍できる環境について書いた記事では、外的刺激に対する脳の反応という観点から、人間は大きく分けるとプレッシャーの掛かる環境で力を発揮しやすいタイプとマイペースに仕事ができる環境で力を発揮できるタイプに分かれるということを説明しました。

今回の記事では、自分や他人がどちらのタイプかを推測するための手掛かりとなる5つ要素について説明します。
その5つの要素は、性別、遺伝子、年齢、環境、経験です。
では、これらがどのように脳の覚醒タイプを判断する手掛かりとなるのか説明していきます。

性別:刺激を求める度合いの違い

人間の個性を見分けるのに性別の違いだけで判断することは難しいのですが、ただ統計的には女性に比べて男性の方が刺激を求めやすいと言われています。
スポーツやゲーム、ギャンブルなど、勝敗が付くものやリスクを伴う行為に興味を持ちやすいのは男性です。

もちろん個人差があるので、女性の中にも刺激を求めやすい人はいますが、全体でみると男性の方が刺激を求める人が多いため、プレッシャーの掛かる環境で力を発揮しやすいタイプも多いと推測できます。

遺伝子:ドーパミン受容体とストレス耐性

遺伝子の違いとしては、ドーパミン受容体 D4遺伝子というものがどんな環境で力を発揮しやすいかに影響していると言われています。
経営者として成功している人は、ドーパミン神経が活性化していることが多いのです。
ドーパミン神経が活発に働くと行動の先の報酬がイメージしやすいので、そのイメージをもとに他の人を導くことができる能力にも関わっていると言えます。

他にもストレスを受けた後に脳の働きが正常な状態の戻りにくくなる変異遺伝子が3つほどあり、それらの遺伝子を持っているとプレッシャーの掛かる環境で働くことが苦手になると考えられます。
ストレスを受けてから立ち直るのに時間が掛かる人がいたら、それは遺伝子の影響である可能性も考えられます。
ただ、ストレス耐性に関わる変異遺伝子を持っていると必ずプレッシャー、ストレスに弱いとは言いきれません。
それは遺伝子を持っていたとしても、その遺伝子が刺激に反応しやすいかどうかは、現在に至るまで過ごしてきた環境や経験によっても違ってくるからです。

年齢:テストステロンの減少とその抑制

年を取ると頑固になるという言葉を聴いたことがあると思います。
実際に家族や職場の上司を見てきてそう感じることを経験しているかも知れません。
経験則から人間は年を取ると頑固になると感じている人も多いかもしれませんが、これも個人差があります。

実際は、確かに年を取ると頑固になる人はいるのですが、反対に年齢を重ねて賢明になっていく人もいて、その違いはテストステロンという性ホルモンが関係しています。
テストステロンは男性の方が多く体内に持っていますが、女性の体内にもテストステロンはあります。

テストステロンは、年齢を重ねるとある程度は減少するのですが、人間が頑固になるのは、テストステロンの減少が関係あるという研究結果があります。
この研究では、年齢を重ねることがテストステロンが減少する直接の原因ではなく、年齢を重ねるうちに肥満になったり、抑うつ状態になることが原因だとわかっています。

若い頃か食事や睡眠を大切にして、ストレスに柔軟に対応する生活をして心身の健康を維持してきた人は、その生活を送ってきたこと自体が賢明であり、その積み重ねが年を取ってからも賢明な思考の維持につながっていると考えられるので、私は賢明な生活習慣の維持とテストステロンの両方が年齢を重ねてからの賢明さの維持につながっていると考えます。

仕事のパフォーマンスという観点で言うと、テストステロンは前向きな思考、高い集中力、モチベーションの維持にも必要なので、年齢を重ねてもテストステロンの減少を抑えることができていれば仕事で良いパフォーマンスを発揮できる期間も長くなると言えます。

環境:

ここでいう環境の違いとは、仕事をする環境の違いのことを指します。
就職をした後、脳の覚醒タイプを見極めて人員配置が行われている会社は少ないと思います。
運よく上手く自分の覚醒タイプに合った仕事をする職場に行くことができた場合は、自分の力を伸ばしやすくなります。
反対に自分の覚醒タイプに合わない仕事をすることになった場合は、モチベーションの低下や成果が出ないことによる自尊心の低下が起きることもあります。
脳の覚醒タイプの特徴を活かすことができる環境に出会えた人の方が、自分の脳の働きを促進することができるのでよりタイプの特徴が色濃くなっていきます。

環境の違いの中には、どのような人に囲まれて仕事をしてきたかという違いもあります。
プレッシャーがあっても力を発揮しやすい人なら、厳しい上司の元の方が力を発揮できるけど、上司がのんびりしていると退屈に感じてしまう可能性もあります。
マイペースで仕事ができた方が力を発揮しやすい人なら、厳しい上司の元なら萎縮して働き続けることになるかもしれませんが、温和な上司の元であれば集中して仕事を行うことができるでしょう。
この違いも1つの環境に長くいるほどその人のタイプの形成に影響を与えます。

経験:経験とストレス耐性

自分の脳の覚醒タイプがプレッシャーの掛かる環境で力を発揮しやすいタイプだった人でも、どんな仕事を経験してきたかによって自分に合った仕事に変化が出てくることがあります。

大きなプレッシャーを受ける仕事を成功させてきた経験によってストレス耐性が強化されて経験を重ねるほどプレッシャーの掛かる環境で働くことへの抵抗感が弱まっていくこともあればプレッシャーを受け続けてきたことで少し心理的負荷の低い職場に変わりたいと思うようになることもあります。

反対にマイペースに仕事ができる環境で力を発揮できるタイプだった人が、経験を重ねたことで少しプレッシャーの掛かる仕事にも対応できるようになることもあればプレッシャーが少ない環境に慣れて心理的負荷を上げたくないという思いが強くなっていくこともあります。

経験とストレス耐性の関係にも個人差があるので、仕事を続ける中で自分に合った環境にも変化が出てくることがあります。

5つの要素から現在のタイプを見極める

プレッシャーの掛かる環境で力を発揮しやすいタイプとマイペースに仕事ができる環境で力を発揮できるタイプという違いは、ベースに生得的な要因である性別と遺伝子の影響がありますが、生まれてからの年齢の変化、環境から受ける刺激と経験によって偏りが出てくると考えて頂いて良いかと思います。

そのため、自分がどんな環境でどんな仕事をすれば力が発揮できるのかを考える時には、自分の性格と社会人になるまでに育った環境や体験したこと、社会人になってから働いた環境と得た経験、そして年齢を重ねる中で感じている変化などを手掛かりにして下さい。

5つの要素をもとに脳の覚醒タイプを判断することは簡単ではありませんが、考えたことを書き留めながら整理していくとどちらのタイプかの判断はしやすくなるので、自分のタイプの見極めからでいいので一度試してみて下さい。

衣川竜也/きぬがわたつなり

企業の人財育成コンサルティング、研修を担当しています。
人材コンサルティングは、管理職を含めたリーダー育成のコーチングやミーティングを提供しています。
研修は、メンタルヘルス、ハラスメント、コミュニケーション能力向上、脳科学を基礎とした人材育成などを行っています。

資格 公認心理師


株式会社AXIAへのコンタクト

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