報酬回路とは何か

前々回の感情のコントロールと2つのネットワークという記事では、人間が生活の中でコントロールする必要のある脳内ネットワークには脅威回路と報酬回路があるという話をしました。
前回の記事は脅威回路についてビジネス上に生じるリスクという観点かから説明したので、今回は報酬回路について説明いたします。

脅威回路は生存を確保するための闘争、逃走反応を引き起こす回路なのに対して、報酬回路は満足感を感じて安心を得ることを目的に働く回路です。

挑戦するために必要な報酬回路

報酬回路とは、満足感を得るための報酬が得られると想像することで働き始めます。
例えば、この仕事を成功させたら自分の評価が上がり、給料も増えるだろうと想像することで、その仕事へのモチベーションが上がるという感じです。

人の性格や取り組む内容によって何を報酬と感じるかは違いがありますが、自分が報酬だと感じられるものを得ることができると想像すると報酬回路が活性化します。
この時には、脳内でドーパミンという神経伝達物質が放出され、ポジティブな気分になって多少のリスクがあっても行動を起こすことができるようになります。
仕事をする上では、行動を起こすと成果が得られる見込みがあるが、失敗するリスクもあるということに取り組まなければならない場面に遭遇することは多々あります。
そんな時、報酬を想像することでモチベーションを高めることで、リスクを自覚しながらもパフォーマンスを発揮して成果を出すために必要なのが報酬回路です。

報酬回路の暴走

報酬回路は、モチベーションを高めて挑戦をするために必要なものですが、働き方次第では問題ある行動を誘発することにもつながります。
例えば、明らかにリスクが大きく、成功よりも失敗をする可能性の方が高い仕事があり、成功させると自分の評価が上がると感じた人がリスクを省みず自分の評価を高めるためだけにその仕事を進めてしまうということがあるとします。
結果的にその人は失敗をして会社に損害を生じさせてしまいました。
その仕事を進めた人は、リスクが大きいことも失敗の可能性が高いことも経験から良くわかっていたのですが、成功させて評価が高まるという報酬を強く欲していたために報酬回路が過剰に働き仕事を進めてしまったのです。

このように報酬回路が活性化してドーパミンがたくさん放出されると、人間はリスクを感じる感覚が麻痺をして望ましくない行動を取ってしまうことがあるのです。
時々企業の管理職の方から、「仕事をする上でやる気と行動力はあるけど、安易に行動をして失敗ばかりする部下がいて困っている」という相談を受けることがありますが、このようなケースは短絡的な思考で報酬を求め、自分の力量、顧客の要望、報酬とリスクのバランスや仕事の成功確率などを不正確に認識して行動を起こしている状態です。

報酬回路が暴走してしまうと報酬を得るために成果の出ない行動を繰り返すことになってしまうので、報酬回路の働きを成果につなげるために身につけておくべきものがあります。

報酬回路を活かすために必要な知識と経験

報酬回路は報酬が得られることを想像することで活性化する回路なので、報酬をイメージしてしまうと“目先の利益に目がくらむ”という状態になってしまうことがあります。
脅威回路にしても報酬回路にしても、人間が生きる上で優先的に働くようになっている回路なので、それらが働けば冷静さを失ってしまうのは脳の仕組みとして仕方がないことなのです。
ただ、一時的に冷静さを欠いたとしても我に返って望ましい判断と行動ができる必要があります。
それを可能にしてくれるものが知識と経験なのです。

この仕事を成功させるとどれだけのメリットがあるということを知りモチベーションが高まった時、同時に知識や経験によってその仕事に含まれるリスク、その仕事の難易度、成功の可能性などを考えることができる知識と経験です。
ビジネスで力をつけていくためには、努力によって知識を身につけ、実務によって経験を高めていくことが必要です。
報酬回路が良く働くこと自体は、モチベーションや行動力の高さにつながるので仕事をする上で良いことなのですが、目先の利益に囚われてしまう人は安易な判断と行動をしてしまいます。

報酬回路に力を仕事に成果につなげている人の特徴

報酬回路の働きを活かすための知識と経験は、初めから身に着いているものではありません。
しかし、仕事の中で着実に知識と経験を積み重ねる人といつまでたっても目先の利益の囚われて間違った判断と行動をしてしまう人がいます。
その違いは何かというと、知識と経験がない時には自分よりも知識と経験を持っている人の指示を理解して素直に行動するということを行えるかどうかという点です。

自分に知識と経験がないのであれば、サポートやアドバイスを受けながら自分の知識と経験を高めていき報酬回路をコントロールするために力を身につけていくことが必要になります。
知識と経験のないうちから『自分なりに考えて行動しよう』、『1人で成果を出して評価を得よう』と考えてしまう人は仕事の実力が身に着きにくいと言えます。
なぜなら、もうこの段階で報酬回路の働きがコントロールできていないからです。

仕事ができる人ほど、目先の利益ではなくもっと先にある利益を得るため、今できる最善の選択肢を選んで行動することができます。
それが今得られる利益を少なくしたとしても代わりに知識と経験が得られるのなら、誰かに助けてもらう、協力してもらうという選択肢を選ぶことができるのです。
報酬回路は、意欲的な行動を継続するために必要なものですが、それは知識と経験があってこそ成果につなげ続けることができるものなのです。

衣川竜也/きぬがわたつなり

企業の人財育成コンサルティング、研修を担当しています。
人材コンサルティングは、管理職を含めたリーダー育成のコーチングやミーティングを提供しています。
研修は、メンタルヘルス、ハラスメント、コミュニケーション能力向上、脳科学を基礎とした人材育成などを行っています。

資格 公認心理師


雇用クリーンプランナー公式認定講座
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