人的資本経営という経営戦略

今後は従業員の確保が難しくなることが予測される中、人的資本経営の重要性が増しています。
企業が成長して生き残っていくために企業がどのような姿勢で人と向き合っていくかが問われる時代になっています。
しかし、実際はまだまだ人的資本経営が進んでいない企業はたくさんあると思います。
この記事では、人的資本経営という経営戦略を実現するために把握しておきたい日本企業の現状について経済産業省が発表しているデータを元に私の考えをまとめています。

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人的資本経営という経営戦略

人的資本経営は、人材を資本と考え、人材の成長と共に企業が成長していくための中長期的なビジョンを持って取り組む経営戦略です。
その企業で働く人の能力、人柄、社内外で築いた関係性が企業の成長の背景にあると考え、人材の成長に企業が積極的に投資をしていきます。
人的資本経営は、経済産業省が企業に対して取り組むことを推進していますが、その重要性については「人材版伊藤レポート」に詳しくまとめられています。

人材に掛かるお金を経費ではなく投資と考える

人的資本経営では、人材に掛かるお金を経費ではなく投資と考えます。
企業経営において4つの資源としてヒト、モノ、カネ、情報があるといわれていて、ヒトも資源という捉え方が主流でしたが、ヒトの能力、技術、知識などは成長するためヒトにかけるお金は投資として捉えるのが人的資本経営です。

例えば、入社したばかりの新入社員が教育、機会の提供などによって成長した場合、企業に多くの利益をもたらすようになります。
実際に成長している企業は、成長して企業に利益をもたらす人材が育っているという事例が多いのではないでしょうか。
これからの企業は「人材の成長とその先にある可能性に対してどのように投資をしていくのか」ということを考えていく必要があると思います。

経営者の姿勢と従業員のエンゲージメント

人が成長に対して資金を投資できているかどうかは、経営者の人に対する考え方、向き合い方の表れでもあると思います。
投資とは未来に起こる変化をある程度信頼することができなければ行えません。
従業員の成長を信じ、成長するまでじっくりと向き合っていく必要があるでしょう。

経営者自身が、『いつ辞めるかわからない人にあまり投資をしたくない』、『とりあえず労働力として支持したことをしてくれればいい』などと考えていた場合、人の成長を信じてもいなければ求めてもいないという状態なので、そのような経営者の下では働く人のモチベーションは高まらないし、成長することも難しいと思います。

企業の成長や自身の願望だけでなく、従業員自身の成長や生活の向上を心から願い、一緒に成長すること、幸せになることを目指しているような姿勢が経営者にあってこそ人的資本経営を推進できる、と私は考えています。
このような経営者の姿勢であれば、企業と従業員との間の信頼感が築かれ、従業員エンゲージメントは高まるでしょう。

人的資本経営の土台となる従業員エンゲージメントとは

ここで従業員エンゲージメントについて説明しておきたいと思います。
従業員エンゲージメントとは、企業と個人が目的を共有して、双方の成長と成功に貢献し合う関係性のことを言います。
人的資本経営を推し進めていく上では、従業員エンゲージメントの向上が必要不可欠です。

短期的な視点から見ると従業員エンゲージメントの向上を目指すことが望ましく、それがある程度の水準で維持されてこそ人的資本経営につながっていきます。
なぜなら、不必要かつ過度なストレスのない心理的安全性が保たれた関係性の中でこそ信頼関係は育まれ、熱意や意欲、興味を持って取り組みからこそ成長が促進されるからです。

日本企業の課題は従業員エンゲージメントの向上

従業員エンゲージメントを維持する雇用環境を生み出すことは人的資本経営につながっていきますが、経済産業省が発表しているデータからは日本企業で働く人の従業員エンゲージメントの低さが見て取れます。

下記で取り上げている2つのグラフは、個人と組織の関係性についてAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に参加する14か国を比較して取り上げたものです。
個人と組織の関係性①のグラフでは、APEC(アジア太平洋経済協力会議)の14か国の中で、現在勤務している企業で継続して働きたいと考えている人の割合は日本が一番低いという結果となっています。
しかし、個人と組織の関係性②のグラフでは、転職意向のある人の割合と独立・起業思考のある人の割合が日本が最下位という結果が出ています。
この2つのグラフから読み取れることは、日本人は今の所属先で働くことや今の仕事に従事していることに満足はしていないが、環境を変えることも考えておらず、企業に対する信頼と、仕事への熱意や意欲が低いまま働き続けている人が多いということです。
すなわち、日本の企業で働く人たちの従業員エンゲージメントが低いということが表れているのです。

APACの14か国・地域を対象にした調査では、現在の勤務先で継続して働きたいと考える者の割合は、日本が最下位(52.4%)。

経済産業省HP 産業人材政策室の人的資本経営に関する参考資料を印象

 

一方で、転職意向、独立・起業志向のある人の割合も、日本が最下位。

経済産業省HP 産業人材政策室の人的資本経営に関する参考資料を印象

従業員エンゲージメントを高めるための企業の取り組み方

上記の結果から、従業員エンゲージメントを高めるための取り組みが必要だということがわかりますが、いったい何をすればいいのでしょうか。
そのヒントも経済産業省のホームページに掲載されている参考資料から読み取ることができるので、データを見ながら従業員エンゲージメントを高めるための取り組みについて考察していきたいと思います。

経営戦略を実現するための人材を確保する

人的資本経営は一種の経営戦略です。
この経営戦略を実現するためには、そのための人材を採用して、教育を行い、適したポジションに配置する必要があります。
下記のデータには、多くの企業が経営戦略の実現に必要な人材を確保できていないことが表れています。

経営戦略の実現に必要な人材の確保状況

人的資本経営の実現を目指すなら、企業と従業員の信頼関係の構築が欠かせない要素ですが、人望を得ることができない人ばかりに権限を与えてしまっている企業は信頼関係の構築どころか人が心を病んでしまったり、去って行ってしまいます。
私が知っている企業も上記のような状態だったところがありますが、経営者が変わって役員の大幅な入れ替えを行ってから離職率が低下して、人材が残るようになりました。

この企業は、新しい経営者がどのように会社を立て直すか明確なビジョンを持って、それに必要な人材の条件を整理して人材の確保に当たったことが軌道修正ができた大きな要因だったと思います。
役員が入れ替わることでその下の役職者が働きやすくなり、これまでは部長や課長の働き方を見て出世はしたくないと思っていたと思っていた一般社員もこの会社で出世することに意欲を見せるようになったそうです。

経営戦略を実現できる力を持った人材とは

下記のデータからは、経営戦略を実現できる企業が抱えている人材の特徴が表れています。
経営層の人材の多様性が高いほど、革新的な価値を生み出して売上を伸ばすことができるわかると思います。

一定数の社員がいて経営陣も複数の人材がいる企業の場合は、経営層に多様な人材がいてお互いを刺激し合ったり、意見を出し合ったりすることでさまざまな視点から現状を捉えたり、方向性を模索することができるため革新的な取り組みも生まれるのでしょう。
経営者が一人で立ち上げた会社の場合は、その経営者が大企業出身で一部の業務だけで成果を出した人よりも、中小企業で複数の業務を経験した人の方が経営を多角的な視点から考えることができるし、多様な業務を行うことができるため事業が成功しているような気がしますが、下記のデータを見るとその感覚は間違っていないように感じます。

性別、年齢、出身国、キャリアパス、他の業界で働いた経験、学歴の6要素で測定した経営層の 多様性スコア

従業員のスキルアップへの取り組みと日本の現状

下記のデータからは、従業員が有しているスキルと求められるスキルのギャップを埋めるためには、従業員の再教育とそれに伴うスキルの向上が必要だと多くの経営者が感じていることがわかります。

従業員の有しているスキルが求められるスキルよりも低い場合、成功体験を得ることが難しく、仕事の負荷を感じる度合いも高くなるでしょう。
そのような状態が改善されない中では従業員の熱意や意欲が高まらず、企業全体としても成果は出ないでしょう。
もし経営者が従業員の再教育とスキルアップが必要だと感じつつも、その取り組みを実行できていないのであれば人的資本経営の実現は難しくなります。

スキルギャップを埋めるための企業の取組

日本の従業員の社外学習、自己啓発の現状

経営者が従業員のスキルアップの必要性を感じている状況に反して、日本は他の国と比べて個人で社外学習と自己啓発を行っていない人の割合がダントツ多いという結果が出ています。
経営者としては自社で教育することも必要だけど、従業員には自己成長も求めたいというのが本音だと思いますが、現状は厳しい状態です。
ただ、この現状は個々の従業員の問題ではなく、多くの企業の従業員に教育方針が曖昧で十分な教育が実施されていないことが関係しているのではないかと思っています。

個人の社外学習・自己啓発

企業が個人の学習意欲を刺激できていない

下記のデータからは、日本の企業が従業員の学びに対して十分な投資ができていないことがわかります。
個人が自ら成長のために学びを求める姿は理想的ですが、日本の現状が社会学習、自己啓発を行っていない人の数が多いのに対して、企業の学びへの投資額が少ないというデータからは、社会全体を考えると企業が従業員の学びを促進するための費用と時間を投資することが必要なのではないかと感じさせられます。

経営者は、上記のデータだけを見て従業員のスキルアップが進まない原因を従業員だけの問題と考えるのではなく、自社の従業員の学びに対する投資が十分かどうかを見直した方がいいことを受け入れなければならないことが下記のデータに表れているのだと思います。

企業の人材投資(OJT以外)は国際的にみて低い水準。

人的資本経営の実現するためのポイント

私は経済産業省の人的資本経営に関する参考資料を見た時にこの記事に書いているようなことを感じたのですが、最後にそれらを端的にまとめたいと思います。
人的資本経営の概要やこの記事で紹介しているデータからは以下のようなことが言えるのではないかと思います。

  • 従業員が働き続けたいと思える環境作りをしろ
  • 従業員の成長欲求を刺激するほど学びに投資をしろ
  • この会社も良いが他の会社も見たいという従業員が増えることが理想的
  • 従業員の転職を恐れず人の流動性を受け入れた方が企業は伸びる
  • 企業に残る従業員からも転職した従業員からも愛着を持たれる企業を目指せ

私の知り合いには30歳になるまでに2度の転職をして確実に自分のキャリアを伸ばしている人がいるのですが、その人は自分が働いた会社の環境にある程度満足していたようです。
しかし、仕事をして成長を感じる中で新しい挑戦をしたいという気持ちになり転職をして、その挑戦が形になった時点で再度転職を考えて実行したのです。

この人のキャリア構築の背景には、本人の努力や魅力があるのは確かですが、それだけでなく所属した企業が働きやすい環境であり、学ぶ機会を与えてくれる環境でもありました。
この人に関しては転職をしていますが、この人が所属した企業には社会に出てから着実にスキルアップをして意欲的な転職をする人がいる反面、その企業に残ってさらなる成長を目指したい、この会社を通じて社会に貢献したいと考えている従業員もいることでしょう。
また、その会社は社外から転職によって優秀な人材が入ってくる会社でもあります。

人的資本経営が形になっていくと、企業規模に関係なく上記のような魅力ある企業になっていくのでしょう。
私も一人の経営者として自社に所属する人とは信頼関係を構築して、企業の成長とともに所属する人の自己実現を応援できる企業を目指したいと思っています。

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